古谷実 『ゲレクシス』自分なりの感想
古谷実先生の9作品目の作品になる『ゲレクシス』を読んだので、その感想と自分なりの考察を書いていきます。
まず表紙から凄いw
古谷実作品は大好きで、
『ゲレクシス』以前からの読者であります。
『稲中』から始まり、『僕といっしよ』『グリーンヒル』、『ヒミズ』、『シガテラ』、『わにとかげぎす』、『ヒメアノール』、『サルチネス』 全て持っております。
そして、9作品目の作品となる『ゲレクシス』、一言で言うなら、
カオスな作品です。
はい。読んでもらえたら分かります。
『ゲレクシス』は読んだことないけど、以前の古谷実作品を読んだことのある人なら、さらに度肝を抜かれると思います。何故なら、それは古谷実作品によくみられる、ひ弱な主人公が悲劇に見舞われるという一種のテンプレートを、良くも悪くも読者を裏切り、新しい展開を見せてくれたからです。
僕は、その新しい展開に見事にやられ、本を一度閉じました。
好きな人はめちゃくちゃ好きだと思います!
感想としては、まず展開が物凄い早く簡潔に進んで行くので、読者を飽きさせません。
さらに、古谷実作品全般に言えることなのですが、哲学的な言い回しが面白いです。
第6話から抜粋
「300キロで走る車の中からアリが見えるか?その道端にいるアリやダンゴムシが見えるか?俺には見えない!」
「でも、アリやダンゴムシは絶対にそこにいるんだぜ?もしかしたら俺たちってそんなんと似てんじゃないか?おい、聞いてるか店長?俺の賢さついて来れるか?人間の目なんてたかが知れてるってお話だぞ?」
車中からはダンゴムシは見えないという当たり前のことに着目してそれを例えに使うというなんと哲学的ナンセンスギャグ漫画でしょうか!!?
つまりそこに絶対に存在している何かを確認できない人間の目はたかが知れてるってことですね。そう断言しています。
人間の目や、触覚、感覚なんてものは、まだまだ完全ではなくて、知らないことが多すぎてヤバイんだけど、あまりスケールがデカくて漠然とし過ぎているから、ヤバイことにも気づいていないという、例えるに、昆虫観察キットに入れられたアリみたいな感じでしょうか。(考え過ぎ)
さらに、『サルチネス』の最終話でも、人間の無知さを裏付けるような言い回しがあります。それは、この世の中に絶対的に決まっているのは、光の速度だけということです。さらに、絶対的に決まっているものは光の速度しかないので、その他の全てのものは正解であり間違いであるというものです。つまり相対性理論ですね。
この二つから言えるのは、
この世界っていうのが、全然よく分からないってことですw
こちらもオススメです!
『ゲレクシス』の話に戻りますが、
まずこの題名ですね
ゲレクシス
???
これは一体どんな意味なんだ 、ということでネットでも議論が交わされていますが、今のところわかっていないようです。
しかし、作中では一応この『ゲレクシス』という言葉、説明されているんです。
それはこうです......
「この世にいてもいなくてもいい比率が完全に完璧に半々になった人間が希にこうなる」
だそうです。
うん、って感じですよね。
それ含め色々と謎なことがあるんですが、それがまた面白いというか。
作中に出てくるキャラが、自分の責任力の無さについて語っているんですが、そのキャラが話す瞬間が余りにも突飛で、読者からしたら「なんでお前、こんな時にそんなこと話す?」ってなります。
さらに、色々と謎はつきません。
そこで、読者はこう思ってしまうわけです。
これって、アンパンなんじゃねぇの?
アンパンとは、つまり、中身があるということです。
つまり、この謎には何か革新的な答えが隠れているんじゃないのかと読者に思わせる力があるということです。もしかしたら、なんの答えもない、中身のないドーナッツみたいなものかも知れないというのに。
真意は作者ではないので分かりませんが、読者にそう思わせるのも、作者の力量かと思います。
最後になりますが、まずこの画像を見てください。
これは、古谷実作品の『僕といっしよ』の一コマです。
『僕といっしよ』は1997年に連載された作品で、『ゲレクシス』は2016に連載されたので、じつに十九年前の作品になります。
この一コマなんですが、右端を見てください。分かりますか?
右端の陰ってるやつ。
あれ、『ゲレクシス』した人間にソックリじゃね...
顔とかソックリですよね...
さらに、まだあります!
次は『グリーンヒル』です。
この作品は2000年に連載されたので、『ゲレクシス』から数えると、じつに16年前の作品になります。
はい。
顔が似てますよねw
ここから、あくまで僕の個人的意見です。
それは、このよく分からん生物が古谷実の頭の中にはずっと前から存在していた。
そして、『僕といっしよ』と『グリーンヒル』に出てきたよく分からん生物っていうのは、両者とも夢の中や、宇宙人的存在として登場しているんですね。そして、面白いのが、このよく分からん生物を見たキャラが、まさに、「この世にいてもいなくてもいい比率が完全に完璧に一緒」のようなキャラなんです。
だから、この『ゲレクシス』という漫画の大元の部分は19年前から、古谷実の頭の中にあった。
さらに、古谷実氏、自身にこのよく分からん生物が見えてるとしたら、さらに面白いんですけどね、それは無いですよねww
こちらも最高!
ギャグ漫画です。
色々と長々書きましたが、僕自身もドーナッツをアンパンに見せかけられた一人なのでしょうか?