海棲昆虫。

都市伝説から、音楽、文芸。

【石川啄木の厳選短歌集2】

僕が個人的に選んだ、石川啄木の短歌を紹介していきます。

 

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石川啄木 - Wikipedia

 

 

なつかしき冬の朝かな。
湯を飲めば、
湯気がやはらかに、顔にかかれり。

 

 

何となく、
今朝は少しく、わが心明るきごとし。
手の爪を切る。

 

 

うつとりと
本の挿絵に眺め入り、
煙草の煙吹きかけてみる。

 

 

腹の底より欠伸もよほし
ながながと欠伸してみゆ、
今年の元日。

 

 

神様と議論して泣きし
あの夢よ!
四日ばかりも前の朝なりし。

 

 

飴売のチャルメラ聞けば
失いし幼き心
ひろへる如し

 

 

神無月岩手の山の初雪の
眉に迫りし
朝を思ひぬ

 

 

その昔
読みしことある小説に
書かれし如く帰る道かな

 

 

公園の隅のベンチに
二度ばかり見かけし男
この頃見えず

 

 

何がなしに息切れるまで
駆け出してみたくなりたり
草原などを

 

 

ふと見れば
とある林の停車場の
時計止まれり雨の夜の汽車

 

 

家を出て五町ばかりは、
用のある人のごとくに
歩いてみたけれど

 

 

秋の空
玲瓏として曇りなき
君をおもへば心さびしき

 

 

 

ちなみに、玲瓏。

というのは、玉のように美しく、鮮やかな様をさします。