海棲昆虫。

都市伝説から、音楽、文芸。

【石川啄木の厳選短歌集4】

今回も、個人的に好きな石川啄木の短歌を紹介していきます。

 

 

小蟻ども
あかき蚯蚓(みみず)のなきがらを
日に二尺ほど曳(ひ)きて日暮れぬ

 

 

青ざめし大いなる顔
ただ一つ
空にうかべり秋の夜の海

 

 

家という都の家を
ことごとく
かぞえて我の住まむ家なし

 

 

銀杏の葉
なかに埋もれし黄楊櫛(つげぐし)も
拾いし日ある山に来てみぬ

 

 

赤煉瓦
ひろく敷きたる大道の
殊にさびしき真昼時かな

 

 

あくがれや
欠けし香炉に思出の
霞(かすみ)焚くなり火に燻りつつ

 

 

夜もすがら壁のこほろぎ
何をなく
冷えしみ心とむらいて泣く

 

 

月明き
秋の海辺のしら砂に
高く笑ひてかなしかりけり

 

 

ふるさとの寺の御廊(みうら)に
踏みにける
小櫛の蝶を夢にみしかな

 

 

形あるもの皆くだき
然る後
好む形につくらむぞよき

 

 

秋の空
廓寥(くわくれう)として影もなし
覚めたる人の心にも似て

 

上の首で出てくる、廓寥(くわくれう)ですけど、(くわくれう)という読み方は昔の読み方で、現代では(かくりょう)と読まれます。

 

廓寥の意味は、広々として物悲しいさま、寂しいさま、です。

 

 

最後の一首!

 

 

いたく錆びしピストル出でぬ
砂山の砂を
指もて掘りてあり