浅野いにお 『零落』 読んだ感想
2017年 10月30日 浅野いにおさんの『零落』が発売されました。
早速読んだので感想を書いていきます。
注意!
多少のネタバレ含みます。
今回の『零落』ですが、私小説的な漫画という印象を受けました。
主人公は、深澤という、中堅漫画家です。年齢は、推定40代といったところでしょうか。
深澤は、漫画家としてある程度の地位を築き上げ、結婚もしているのですが、どこか暗いのです。終始、暗いのです。
なぜなら、40代にして、その築き上げた地位が零落し始めたからです。
そんな彼の暗い生活が続いてゆきます。
あらすじは、こんなところです。
『零落』を読んでいると、自然と深澤の姿が、作者の浅野いにおさんと重なってきました。それは、僕の自意識過剰ではなくて、この漫画の作風に由来するものだと感じます。
まぁ、あとは単純に背景が綺麗ですよね。綺麗といっても、ただの街並みなんですけどね。
浅野いにおの漫画を読んでいると、こんな街に住んでみたいな、とか思ったりします。
面白いなと思ったところは、深澤がTwitterでエゴサーチをしていると、「深澤作品は総じて自意識過剰な中学生のポエム集といった印象。自己陶酔はほどほどにして、漫画を一から見つめなおしていただきたいですね。」というツイートがあり、深澤がノートパソコンをブーメランのように持って、壁に投げつけてしまうシーンです。こんなこと言うのは、あれですけど、この揶揄って、浅野いにおアンチの常套句的な散文ですよねw やはり深澤と作者のリンクは所々見られます。
気になった言葉は、「あなたは誰かを傷つけ続ける。死ぬまでひとりぼっち。だって先輩はこの世の中で、漫画家が一番偉いと思っているから。」
これは、深澤が昔の女に言われた言葉です。
革新的な人物や成功者で、人を傷つけずに成功を収めるような事例が僕にはよくわからないので、この言葉にはすごく共感します。
浅野いにおさんは、前述したように「安いポエムみたい」や「厨二病」などと揶揄されがちですが、僕は言葉選びや、センスがあると言うべきだと思います。
なぜなら、たまに出てくる一言、一言が妙に共感するので。
おざなりくんをオススメします!
言葉のセンスが輝いているので。
もう一つ気になった言葉は、「それに俺は漫画を作ることを、一生死ぬまで向き合う価値のある仕事と信じ込んでたからな」
自分的には、この言葉で、深澤のニヒリスムが理解できました。
この漫画、深澤があまりにかわいそうになってくるので、「漫画、もうやめてもいいんだよ...」と思わず声をかけてやりたくなる程です。
あまり漫画評論家のように分析することは、これ以上避けようと思います。
だって、この『零落』に独自の漫画論を熱く語る人が何人も揶揄されているのに、何にも知らない素人が、この漫画を読んだ後に、分かりきったような感想をベラベラ垂れるのは、もう限界だからです。
それでも、つい熱くなって、感想をベラベラ述べてしまいました。
それくらい議論したくなるような、面白い作品だと思います。
オススメです!